土地境界トラブル

東京などの都市圏では土地境界が1センチ違うだけで数十万円という価格の差になるため、土地境界をめぐるトラブルも少なくありません。また、相手の得=自分の損となるだけに感情的なしこりが生じやすい問題ともいえます。
当事務所では、これまでの経験から最適な解決方法をご提示できると考えています。

土地の境界の意味

土地の「境界」には二つの意味があります。一つは、その土地が法務局に初めて1筆の土地として登記されたときにその土地の範囲を区画するものとして定められた「筆界」といわれる境界です(公法上の境界ともいわれます)。筆界は国が管理するものであるため土地の所有者同士の合意によって変更することはできません。 もう一つは土地の所有者の権利が及ぶ範囲を画する「所有権界」(私法上の境界ともいわれます)です。土地は筆を単位に取引されますので筆界と所有権界は一致するのが通常です。しかし、土地の一部を譲り渡したり、取得時効による土地の一部取得が認められたりすると、筆界と所有権界とに不一致が生じます。
境界のトラブルが発生した場合、筆界が問題なのか、所有権界が問題なのか、よく見極めた上で解決策を検討する必要があります。

土地境界トラブルの類型

土地境界を巡るトラブルは、おおきく3つに分けることが出来ます。①筆界(境界)確認書に関するトラブル②塀に関するトラブル③境界標に関するトラブルです。

筆界(境界)確認書に関するトラブル

筆界確認書とは、隣接する土地の境界線について両土地の所有者が合意を交わした旨を記した書面をいいいます。通常、筆界確認書は土地家屋調査士が作成する境界に関する図面(筆界確認図)に両者が署名押印する体裁で作成されます。以前は、土地家屋調査士が図面を作成するにあたり両土地の所有者に立会わせた上、立会証明書に署名押印を求めるということが行われていましたが、最近は筆界確認書を作成する場合が多いようです。
筆界確認書の持つ意味の一つは所有権界について両土地の所有者に争いがないことを確認するというものです。また、筆界についてはそもそも土地の所有者の合意で動かすことが出来るものではないため筆界確認書には筆界を定めるという意味はありませんが、筆界確認書が筆界を管理する法務局に提出されることにより両土地の所有者に筆界に関する争いがないことが表明され、登記官が筆界を特定するにあたり現地調査を省略し登記手続きを迅速に進めることが出来るといった意味があります。
筆界確認書の作成は土地所有者同士が任意に行うものであるため、境界線について意見が一致しなかったり、確認自体に応じないなどといったトラブルが発生します。
そのような場合、筆界確認書の作成自体を断念して筆界確認書無しで売買などを進めるか、一定の金銭を払って筆界確認書の作成に協力を求める、又は調停や訴訟を提起するなどの方法により解決を目指すことになります。

塀に関するトラブル

hei土地の境界には塀を建てることが通常ですが、この塀を巡ってもトラブルが発生します。塀に関するトラブルで多いのが、塀の越境、塀の設置・解体に関するものです。

まず、塀の越境ですが、やっかいなのが、通常、塀が完成した後に越境に気づく場合がほとんどだということです。法律上は越境部分については撤去を求めることが出来ますが、塀の撤去や再築にはそれなりの費用がかかります。そのため、撤去を拒絶されたり撤去費用の負担を求められる、さらにはそもそも自分の土地の範囲内であり越境していないとして土地の境界の問題に発展することもあります。
隣人同士の問題ですので、裁判を提起するということも将来の関係を考えると難しかったりします。そのため、解決方法は自ずと話し合いをベースとすることになるのが通常です。

次によくある問題が塀の設置、又は解体に関するものです。もともと塀がない土地同士の境界に塀を設置する場合は両者が協議してどのよう塀を建てるのかを決めることになります。その際、土地の境界が定まっていないと塀を建てる位置で揉めることになります。

境界が明確な場合で自己所有地内に塀を建てる場合は原則として設置者が自由に塀の設置を行えます。しかし、隣接地所有者からすると自分の土地に面して塀が建てられるため、塀の大きさ等の構造、その後の塀の管理に関して揉めることがあります。この場合も、民法の相隣関係に関する規定を踏まえつつ、話し合いでの解決を目指すことが多いです。

境界標に関するトラブル

境界標もともと土地に境界線はありませんので、これを可視化すべく土地の境界の角々に境界標を設置します。具体的にはコンクリートや金属製の杭を地面に打ち込みます。

境界標に関するトラブルは、①勝手に杭を入れられた②既存の杭を壊された・動かした、というものです。

一方的に杭を入れられた

まず、合意なく一方的に杭を入れてもそれが境界標としての法的効果を生じさせるものではありません。対応としては、自分の土地内に杭が入れられたのであれば撤去を求めることになります。
杭そのものは他人の所有物ですので、他人が勝手に触ると別のトラブルを生みかねません。かといって放置しておくことも気持ちが悪いものです。さらに、後々、その境界標を黙認したといわれるおそれもあります。

まず、可能であれば双方で話し合って合意の上で正しい位置に入れ直すということがベストです。
話し合いと言っても、杭を入れた側もその位置が正しいと思っている場合がほとんどです。これに対抗するにはそれなりの理由(証拠)を示す必要があります。
境界を主張するための客観的な証拠は地積測量図です。また、過去の航空写真から写っている塀などを指摘して境界を推測する方法もあります。また、自分で撮った昔の写真も有力な証拠になります。
なお、交渉が苦手だという方は弁護士に交渉を依頼するか簡易裁判所の民事調停を利用することをお勧めします。

話し合いを重ね証拠を各種提示しても合意できない場合もあります。
仮に合意ができない場合の手段ですが、法的手続きを経て結着をつけるか、曖昧なまま保留しておくかになります。
保留しておく際に重要なのは、既成事実化されないように杭についての自己の認識を文書などで示して目に見える形で残しておくか、自分が正しいと思う位置に自分で境界標を入れておくことが重要です。

既存の杭を壊された・抜かれた

次に、既存の杭を壊されたというものですが、故意に杭を壊したり動かしたりするという場合には、刑法262条の2「境界損壊罪」という犯罪行為になります。
ただそのような例は少ないと思います。

実際によくある事例が、建物の解体工事の際に工事業者が誤って境界標まで壊してしまって慌てて入れ直したり一旦杭を抜き更地にした後に杭を戻したが、元々杭があった位置からずれていた、というものです。
入れ直された杭が元の位置どおりかどうかは当事者の記憶をベースに話し合っても水掛け論になってしまいなかなか解決しません。
このような場合には、法務局から地積測量図を取り寄せ、図面から杭の位置を再現する(見つけ出す)ことになります。
当事者で判断できないのであれば、土地家屋調査士測量士に依頼して、元の杭の位置を再現してもらうことになります。

やっかいなのは、地積測量図がない場合です。
実際のところ、地積測量図がない土地はいくらでもあります。
この場合は、決定的な資料がない以上、当事者間の話し合いでは解決は難しいです。
この場合の解決の方法としては、

  • 双方で選んだ土地家屋調査士に確定測量を依頼し筆界をだしてもらう。
  • 法務局の筆界特定制度を利用し筆界を示してもらう。
  • 裁判所に境界確認訴訟を提起して、裁判所に判断してもらう。

のいずれかの方法にならざるを得ないと思います。
ただし、いずれの方法も測量が必要となりますので、少なくない費用がかかります。